東京高等裁判所 昭和54年(ラ)336号・昭54年(ラ)389号 決定
工作物の撤去を命ずる仮処分命令につき債務者が自主的にこれを撤去しないため、執行官がその代替執行としてこれを撤去した場合、撤去物件は債務者に引き渡すべきものであるが、債務者がその引取りを拒むときは、執行官は、民事訴訟法七三一条四項、五項を準用して、取りあえず債務者の費用で撤去物件を保管し、後日裁判所の許可を得てこれを競売に付し、その競売代金からその費用を控除した残額を供託することができるものと解されるところ、右の場合における執行官による撤去物件の保管は、本来の仮処分執行としての処分ではなく、仮処分執行に伴い派生した付随的な処分であり、後日裁判所の許可を得て撤去物件を競売に付すまでの一時的、暫定的なものであって、執行官としては、債務者が撤去物件の引取りを拒否する意思を明示している以上、速やかに裁判所の許可を得て撤去物件を競売に付することを要し、執行官がかかる措置をとることなく、いたずらに撤去物件の保管を継続した場合には、裁判所の許可を得て撤去物件を競売に付すのに通常必要とされる相当の期間を超えて保管のために要した費用は、仮処分執行のために必要な費用ということができず、債務者に負担させることができないものというべきである。
かかる見地に立って本件をみてみると、前記認定の事実によれば、相手方は当初から本件撤去物件の引取りを拒否していたことが明らかであるから、執行官としては速やかに裁判所の許可を得て右撤去物件を競売に付すこととを要したものというべく、そのための期間としては一か月あれば必要にして十分であったと解される。それゆえ、本件仮処分執行の費用として債務者である相手方の負担すべき本件撤去物件保管料は、抗告人が日通上田支店及び小諸倉庫に対し支払った各倉庫賃借料のうち各昭和五三年三月一五日から同年四月一四日までの一か月分三万円及び五〇〇〇円の合計額三万五〇〇〇円に限定するのが相当であり、同月一五日以後の各倉庫賃借料は、本件仮処分執行のために必要な費用と認めることができないので、これを相手方に負担させるのは相当でない。
(宮崎 高野 石井)